膜厚計のアプリケーション

プリント回路基板の多層膜の品質管理

薄いAu層やPd(パラジウム)層の下にある、NiP層のリン含有量を非破壊式で測定


 

図1: プリント回路基板を蛍光X線膜厚計で破壊式測定して品質管理

プリント回路基板のはんだ付け部分などは、多層構造Au/Pd/NiP/Cu(上から)になっているのが特徴です。回路基板のはんだ付け特性や接着性を改善するNiP層の上には、酸化を防止するAuとPd層が使用されています。
しかしながら、NiP層内のリン含有量が適切である事が必要です。今までは、Au層やAu/Pd層の下にあるNiP層のリン含有量を非破壊式で測定できませんでした。最新型のエックス線測定器では、大気中でNiP層のリン含有量を測定できます。また、適切な分析ソフトウェアを使用して、NiP層が、他の金属層の下にある場合でも測定できるようになってます。

 

 
図2: リン強度はリン含有量の関数となっています。 グラフは両者の関係が線形であることを示しています。

 

この測定は、左の図3を見てわかるように、容易ではありません。 空気中のリンのK放射(図2)の強度は非常に低いという問題があるからです。しかしながら、このエネルギーのスペクトル領域では、バックグランドのノイズレベルが低いので、良好な測定が可能です。
NiP/Fe合金、NiP/Cu合金、NiP/Al合金、NiP/Cuプリント板における、リン含有量の測定は、公認のフィッシャー基準サンプルを使用して容易にできるようになりました。 蛍光X線膜厚計には、リンが検出可能なシリコンドリフト検出器が採用されています。エックス線光学系を使用してミクロンレベルの狭いエリアをピンポイント測定できるXDV®-μとより大きな領域の平均値が測定できるXDV®SDD(アパチャ ー使用)から得られた模範的結果を、それぞれ表1と表2に示しています。
製品の品質管理の観点から、薄いAu層やAu/Pd層を通してリン含有量を、短時間に非破壊で測定できる事が重要です。

 

 
表1: NiP/Cu/PCBのリン含有量の測定例(XDV®- SDDを使用)

 

表2: 金とパラジウム層の下にある層のリン含有量の測定例 (XDV®-μ使用)

 

 

 

スペクトル分布図が示すように、この測定を可能にするためには、分析ソフトウェアが必要になります。例えば、リンの蛍光X線は金の蛍光X線と重なっています。さらに、NiP層からのリンの蛍光X線放出エネルギーは、Au層により大きく減衰します。 したがって、リン含有量が高い信頼性で測定出来るのは、Au厚さが約70nm以下の場合です。

図4は、Auコーティングされた回路基板とコーティングのない回路基板のスペクトルの比較です。 Au層の下にさらにPd層がある場合でも測定することができますが、信号はPd層でさらに減衰します。 さらに、電着されたPd層は最大4vol%のリンを含んでいる場合が多いので、NiP層のリンを測定をする際には注意する必要があります。

 

図4: Au層のある場合とない場合のスペクトル比較

 

図5: PdとAuコーティングがある場合とない場合のスペクトル比較

 

 

図5はコーティングがない時(黄色いスペクトル)と、NiP層の上にAu/Pdの層がある時のスペクトルの比較を示しています。WinFTM®ソフトウェアはこの影響を計算で修正するので、リン含有量は、Au層単独の厚さが70nm以下、Pd層単独の厚さが200nm以下の範囲で測定できます。Au/Pd層のケースでは、Au層は50nm以下、Pd層は100nm以下になります。 図6は、多層膜の下にあるNiPコーティングと各層の測定結果を示しています。校正後の装置で既知のサンプルを測定した結果、NiP層の厚さは約5%の不確実性で測定でき、リン含有量は±1wt%以内の平均不確実性で測定できることが分かりました。

 

 

 

 

 

 

 

 

図6: プリント回路基板における多層膜コーティング厚とリン含有量の測定結果 (測定値vs既知の設定値)